Birthday
「せつな、何してるの?」
はるかに声をかけられ、せつなはどきりとしたようにそちらを振り向く。
「ええ、ちょっと」
せつなは手に持っている写真を示す。
「この前の運動会の写真、整理していたんです」
「へえ」
はるかは近づいて、せつなが手にしているアルバムを受け取った。表紙には丁寧に日付とイベント名が書かれ、中も同じようにイベントごとにまとまっている。中の写真は、ほたるの学校行事はもちろんだが、はるかやみちるも含めて外出した際の写真、うさぎやちびうさと遊びに行った際の写真など、あらゆるシーンが収められていた。ほとんどの写真がほたるとちびうさを中心にした写真である。
「綺麗にまとめてあるんだな」
はるかがそう言うと、せつなは少し照れたような顔になる。
「二人の成長を、記録しておきたくて……」
せつなはふっと遠くを見つめるような表情をした。
「私はずっとスモールレディのことを見守っていましたが……彼女の成長を記録し、誰かと共有するということはできませんでした。
ほたるという守るべき存在が増えた今、二人の記録を残して振り返り、未来のクイーンやキング、それにスモールレディとほたる自身にお見せしたい、そう思っているのです」
そう言ってせつなは、机上にあった別のアルバムを手にして、また愛おしむような目で眺めた。
「……じゃあ、さ。せつな」
はるかは手にしていたアルバムをパタンと閉じた。
「もう一つ、残さなきゃいけない記録があるんじゃないかな」
はるかはそう言って立ち上がり、ちょっと外に出よう、とせつなを誘う。
「……?」
戸惑うせつなの手を、いいから、とやや無理やり引いて、はるかは部屋を出る。せつなは驚いて、なすがままに引っ張られていった。
玄関のドアをを開けた瞬間、パンッパンッパンッと乾いた音が連続して響き、せつなの顔めがけて一斉に紙帯が飛んできた。
「せつな」「せつなさん」「せつなママ」「プー」
「「「ハッピーバースデー!!」」」
そこにはうさぎ、亜美、レイ、美奈子、まこと、ちびうさ、衛、それからみちるとほたるがいて、皆クラッカーを構えていた。
せつなは驚いて、しばし固まってしまう。いつも冷静で動揺を見せないのに、今は明らかに困惑した表情になっているのが見て取れる。
「これは……」
「見たらわかるだろ。せつなの誕生会」
「今日は午後からハロウィンパーティーをするのではなかったのですか……」
予定よりも早い客の来訪に、せつなは戸惑ったように言った。
「ふふふ。せつなママがお片付けしている間に、私たち準備頑張ったのよ。ね、みちるママ」
ほたるがみちると顔を見合わせてにっこり笑った。
「せつなママってばいつもリビングにいるから、バレないように準備するの、大変だったのよ」
ほたるの発言にせつなは合点がいったように、なるほど、とうなずいた。朝からはるかにはバイクに乗る際に使う防寒具を探してほしいと頼まれ、みちるには奥の部屋の掃除を頼まれ、ほたるにはスモールレディと撮った写真を探してほしいと頼まれ……今日はずいぶん頼みごとをされるものだと思ったら……。
せつなは庭に出されたテーブルに誘導された。そこにはすでに豪華な料理とケーキが並んでいる。
「いつもはせつなが用意してくれるから。今日はまことに腕を奮ってもらったのよ」
みちるの言葉に、まことがへへっ、と恥ずかしそうに笑う。
「一人じゃ作りきれないから、みんなにも手伝ってもらったり、出来合いのものも買ったりしたんですけど……」
「あ、あたしたちも、ちょっと手伝ってみました!ほら、このケーキとか!」
「うさぎちゃん、余計なこと言わなくていいのよ」
見ると、一見美しく整ったケーキだが、端からクリームが零れ落ちそうになっている部分がある。せつなはくすりと笑った。
「ありがとうございます。とっても美味しそう」
「それでね……これは私達からのプレゼント……」
ほたるとちびうさが出てきて、後ろ手に隠していたものを、はいっと差し出した。せつなは受け取り、二人に断ってから袋の中を覗いた。中からは、紙粘土で作ったと思われる写真立てが出てきた。
「二人で工作教室に行って作ったのよ」
「プー、私達の写真はたくさん撮ってくれるけど、プーが全然写っていないじゃない……だから」
ちびうさが少し恥ずかしそうにうつむき、そう言った。
「だからさ」
はるかがせつなの肩をぽんっと叩き、主役の席に座るよう促した。
「今日は君が主役だよ」
せつなが席に座り、皆がわいわいと周りを囲む。ほたるとちびうさはせつなの両脇に入った。まことが手際よくケーキのろうそくに火をつけ、衛が持ってきたカメラをセットする。
「二人の記録を残すなら、君もちゃんと写らなきゃ」
カメラのタイマーを動かし、衛が皆の元へ駆け寄ってきた。
はるかが声をかける。
「ではあらためて……ハッピーバースデー、せつな!」