First.

 部屋を暗くして欲しいと言われたので、僕はベッドサイドの調光ボタンを操作した。部屋全体の明るさを落として、足元の灯りがほんのりと灯るようにする。薄暗い中でもみちるの頬は紅潮し艶やかだったが、表情は固かった。

 「いい?」と囁くような小さな声で確認すると、みちるはおずおずと頷いた。そう言いながらも自らの腕を胸の前に当てたままで、がっちりとガードしているように見える。ひとまず僕は無理にそこをこじ開けようとはせず、緊張に震える唇にキスを落とした。

 キスは何回かしたことがあった。けれど、慣れているとは言い難い。別れ際の挨拶代わりとか、屋外の人がいない場所で軽くとか、お互いの気持ちの表現の延長として試してみた程度、だ。これから行われる行為の前戯として、深い繋がりを持とうとするのは初めてと言ってもいいかもしれない。

 唇を触れ合わせる程度だったところから、初めて中に侵入してみる。薄く開かれた唇の隙間を縫って、舌を忍び込ませた。

「んっ…………」

 ねっとりとした感覚で、僕とみちるの舌が絡み合った。心臓が爆発しそうなほどに音を立てていてみちるに聞こえてしまいそうだったが、緊張しているのはお互い様だろうと、思い切って自分の胸をみちるに押し付ける。エメラルドグリーンの髪を梳いて彼女の後頭部に腕を回すと、みちるも固めていた腕をおずおずと開き、僕の背中に腕を回してくれるのがわかった。温かい、ふかふかした胸がぎゅっと押しつけられる。みちるが僕を受け入れてくれた。そう感じながら、僕は彼女の整った唇と歯列を味わう。

 ゆっくりと口内を何周かして、名残惜しむように離れれば、潤んだ瞳がぶつかった。僕は先ほどまで閉ざされていた胸元に手を伸ばし、ひとつひとつ丁寧にボタンを外していった。みちるは顔を真っ赤にしながら、僕の手の動きを見つめている。

 ブラウスの下から、クラシカルなレースの上品なランジェリーが覗いた。その上からそっと、大きな膨らみを僕の手で包み込む。

「僕のとは大違いだ」

 思わず素直な感想が溢れ出た。みちるはどう反応して良いのか分からなかったようで、恥ずかしそうに目を伏せたまま軽く眉を歪めるだけだった。ランジェリーに対する感想なのか、あるいはその下に隠された柔らかい膨らみに対する感想なのか、判別がつかなかったのかもしれない。

 実際のところは、どちらもだ。

「はるかは……脱がないの?」

 みちるにそう言われたので、一瞬迷ってから僕もシャツのボタンに手をかけた。自分ばかり早く彼女に触れたいからと一方的に脱がせたのはフェアじゃないだろうと思ったからだ。今度はみちるの手が伸びてきて、下からボタンを外してくれた。ボタンを外し終わったらバサッとシャツを脱ぎ、その下のタンクトップとスポーツブラジャーまでさっさと脱いでしまう。みちるは驚いたように口元に手を当てた。

「ん?」

「あ、えっと……びっくりして」

 みちるはしどろもどろになって目を逸らした。

 いきなりすぎただろうか。でも、これからみちるにも同じようになってもらうわけだから、先に僕が脱いでいた方が気が楽かもしれない。そう思っただけだ。僕は緊張こそしていたけれど恥ずかしさはそれほどなかったから、抵抗はなかった。

 気づけばみちるは、また胸元を腕で隠すように抱えていた。

「恥ずかしがらないでみちる……すごく綺麗だ」

 みちるにそっと囁きながら、僕はもう一度キスをした。こうすれば彼女の緊張が少し和らぐことを、さっき覚えたからだ。案の定、少し気が逸れたのか、みちるの腕が軽く緩む。僕は隙間から手を差し入れて、たっぷりのレースの上から胸を包み込むよう触れた。

 マシュマロのような柔らかくふにふにとした感触を想像していたけれど、実際は少し違った。むっちりと弾力があり、内側から弾き返すような密度の高さを感じる。マシュマロに少し餅のような弾力を混ぜれば近いかもしれない。期待感が高まってしまい、僕は思わずレースをめくり中に直接触れてみる。きゅっと固く締まった蕾が指に触れた。

「あっ」

 みちるが軽く声を上げた。慌てて指を退けると、みちるが涙目でこちらを見ている。

「あ……ごめん」

「いいの、いいんだけど……どうしても、慣れなくて。…………ごめんなさい」

 反射的に手を引っ込めて謝ってしまったが、どうやらみちるは否定的な感情ではないらしい。僕が好意的に捉えているせいかもしれないが、頬を紅潮させ涙目で訴える姿はどう見ても煽っているようにしか見えなかった。

「いや、僕も初めてだからわからなくて……嫌だと思ったらいつでも言って」

 みちるがこくりと頷くのを見届けて、僕はもう一度レースの下へ手を忍ばせた。

 先ほど確かめた通り、彼女の膨らみは僕のもの以上に弾力と張りがあり、もっちりと手に吸い付いてきた。横たわっているにも関わらず、手にはたわみと重みすらも感じるほどだ。いつまでもランジェリーの中に収まっているのもキツそうに見えて、僕はそれを解放してやるためにみちるの背中に手を伸ばした。

 ぷるん、とか、ふるん、とか、そういう効果音をつけたくなるほどに、彼女の双丘はきれいに溢れ出てきた。僕は思わず見惚れてしまった。

「……やだ、そんなに見ないで」

「なんで? こんなに綺麗なのに」

 隠したがるみちるの腕をやんわりと解き、僕は膨らみに手を添えた。温かくまあるいかたちが僕の手にぴたりと感じられる。ツンと上を向いた先端が手のひらに当たっていた。優しく撫でるように刺激する。みちるはきゅっと目を瞑った。

「んっ……ふっ…………あ、ん……」

 縫い合わせた唇の隙間から、小さな声が漏れる。僕の頭の中では、興奮で逆流しそうなほど血が巡っている一方で、これで良いのかと冷静に問う自分がせめぎ合っていた。