First.

 僕にとっては、正真正銘、これが人生初めてのセックスだった。


 僕はとても女の子からモテたし、今まで外でプレイボーイを演じてみることもあったけれど、実際に女の子と真剣交際をしたことがあるかと言われるとNOだった。僕から声をかけて反応する女の子は可愛いと思ったが、まあ、実際僕は同性なわけだし、本気で僕と付き合おうと思うほどの相手はいなかったというのもある。それ以上に僕自身も、一歩踏み込んだ関係になりたいと思える子はいなかった。

 本気で付き合おうと思ってなかったわけだから、同性への性交渉の知識もほとんどなかった。学校で学ぶ最低限の知識プラスアルファ、つまり、異性間の交渉がどんなものかをなんとなく知っているくらいだ。

 だからみちると初めて「本気のお付き合い」を開始した時、僕はかなり悩んだ。みちるとは踏み込んだ関係になりたい、なっても良いと思えたからそうしたわけだけど、実際にやり方を教えてくれる人がいるわけでもない。みちるもどうやら、僕が初めての相手らしい。初めて同士で、どこまでできるのだろう。傷つけず嫌がられず進められるのだろうか。頭の中はそんな気持ちでいっぱいだった。


 そんなわけで話を元に戻すと、いま目の前のみちるの反応が好感触なのかどうか自信がない。逐一みちるに聞いてみればいいのだが、それもそれでどうなのだろう。カッコ悪くないだろうか。



「……大丈夫? みちる」

 結局僕は、直接みちるに尋ねることで安心感を得ることにしてしまった。普段表向きはスマートに見えることを意識しているだけに情けないが、みちるを傷つけないための手段と思うしかない。

 みちるはこくりと小さく頷いてから言った。

「あの……上手く言えないんだけど」

 視線が迷うように揺れる。

「ここ、触られると、身体の奥が、きゅんってするの…………すごくドキドキして……」

 みちるの声はみるみるうちに小さくすぼんでいく。僕は思わず顔を近づけてしまった。

「えっと…………だから、続けて?」

「あ、うん。わかった」

 おそらくとても恥じらいながら伝えてくれたであろうことは、みちるの表情を見れば明らかだった。みちるの羞恥を煽ってしまったことに、些かの申し訳なさを抱く。次はもっとスマートにできたら──最初の一回が終わらぬうちから次のことを考えるのもどうかと思うが、──僕は心にそっと誓った。

 ひとまずみちるが嫌がっていないことはわかったから、気をよくした僕は愛撫を続けた。もちもちとした質感と、固くなった先端の感触を交互に楽しみ、ふと思いついたようにそれを口に含んでみる。それは本当に思いつきで、先ほど頭に浮かんだ食べ物の食感を実際に確かめたかったから、そんな気持ちだったからと言ってもいいかもしれない。

「ひゃぁっ……‼︎ はっ、はるか⁈」

 みちるが驚いたような声を上げたのがわかったが、今度は躊躇わずに続けた。想像通り、いや想像以上に、手以外の場所でみちるを愛でることに、僕は興奮と快感を覚えた。人に対して「食べたい」とか「美味しい」という表現を使ったことはなかったしそう表現されることに共感したことはなかったが、なるほど、これは確かに。

 みちるは美味しい。

「ふぁ……あっ…………んんっ、はぁ、はる……」

 みちるは僕に抱きすくめられ食べられながら、もじもじと身を捩っていた。

 どれほど味わっても損なわれることのない甘い果実。僕は目の前の二つの大きな実を、夢中で貪った。


 くしゃり、と髪を掻く指の感触に気づき、僕はようやく顔を上げた。みちるが目を細めながら僕から与えられる刺激に身を任せる様子が見える。相変わらず頬を紅潮させ、いつの間にか息もだいぶ上がっていた。

「……はるかぁ……」

 泣きそうな顔で僕を求め手を伸ばす彼女に、優しく口付けた。

「すごく、びっくりしたしくすぐったかったし…………ドキドキしたわ」

「ごめん。みちるがあまりに美味しくて」

「…………ばか」

 僕がついにやけてそう言ってしまったから、みちるは軽くむくれて言った。そうは言っても、本当のことだから仕方がない。いつもは品のいいお嬢様のみちるが頬を染めながら恥ずかしがる姿はなんだか可愛らしくて、僕も身体の奥底がむずむず、ドキドキとする。

 僕が散々〝食べて〟しまったみちるの胸元から、ウエストライン、そして腰回りに視線を移した。何も言わずともその先に意図する行為が伝わったようで、みちるは僕から視線を逸らしきゅっと足を閉じてしまう。僕はスカートのチャックをするすると下ろして脱がせた。あまり無理矢理にならないよう、さりげなく下着に隠された中心付近に触れてみる。

 熱い。そして、ほんのりとわかる湿り気。

「みちる……足、広げて」

 みちるはちらりと僕の方を見た。この先の行為に興味はあるけれど恥ずかしい。そんな気持ちの間で迷っているようだった。

 やがて、閉じていた足にほんの少し隙間ができる。

「お願い……あまり、見ないでね」

 僕はうん、と頷いてから、もう一度そこに触れてみた。

「やっぱり……濡れてる」

 心の声に留めておこうと思ったが、思わずそう口にしてしまった。なんと言うか、本当に濡れることに半分驚いていた気持ちもあるし、みちるが僕の愛撫に反応してくれた証であるような気もして、素直に喜んでしまったというのもある。みちるが軽く咎めるような視線を向けた気がするが、僕は構わずほんのりと湿り気を帯びる中心部をなぞった。

「んんっ……」

 みちるの微かな息の乱れを聞きながら、僕はそこを何度か往復した。触れれば触れるほどそこが熱くなるような気がするが、錯覚だろうか。今度は下着のウエスト部から手を忍ばせ、直接触れてみた。

「はぁ……あっ、はるか……?」

 みちるがぎゅっとシーツを握りしめた。こころなしか、足にも少し力が入る。

「大丈夫、力抜いて」

 僕は指先をそのままに、顔を上げてみちるに覆いかぶさるよう跨ってキスをした。ちゅっちゅっ、と浅く啄むようなキスを数回しながら、指先でみちるから溢れ出る蜜の感触を確かめる。熱くて柔らかい凹凸。どこにどう触れて、どこに〝挿れる〟のか──手探りではよくわからない。

「ね、やっぱりちょっと、見てもいい?」

「えっ、……でも」

 僕の願いに、みちるはあからさまに動揺した様子で首を振った。

「だって、このままじゃよくわからないよ。みちるを傷つけたくないし……気持ちよくしたいし」

 畳み掛ける僕の言葉にみちるは目を泳がせてから頷き、おずおずと足を広げる。

「わかったわ。ちょっとだけ……」

 僕はみちるの下着を脱がせた。彼女から出た蜜がほんのりと染みになっていることは、今は伝えないでおこう。みちるに見えないよう、衣服の近くにそっとよけた。

 改めて見るみちるの中心部分は、熟れた果実のように艶やかだった。みちるが僕に全てを曝け出し、触れられることに、今更ながらドキドキする。

 ただ、実際に見てみたところで結局は初めてなのだから、わからないものはわからないものだ。むしろ、実際に見てみたら思っていた以上にデリケートに感じられるそこに、僕は戸惑ってもいた。

「はるか?」

 何もせずにいる僕を怪訝に思ったのか、あるいはじっくり見ていたのが嫌だったのだろう、みちるに呼ばれた。生返事をしながら、僕は唾をごくりと飲んで、おそるおそる指で触れてみる。中心部を守るように囲むひだの奥に潜む場所。おそらくここが、僕を受け入れてくれるはずの場所。表面を触れて確かめてから、ゆっくりと人差し指を挿れてみた。

「ふぅっ…………んっ」

 みちるが身体をこわばらせ、顔を歪めた。思った以上に狭い。みちるが僕を締め付けるのがよくわかる。

「だい、じょうぶ? 痛い?」

 こわごわと聞いてみると、みちるは頷いた。手にも足にも、明らかに力が入っているようだ。とりあえず、様子を見ながら浅い場所でゆっくりと指を動かしてみることにした。

 みちるに触れながら、僕自身もとても身体が熱くなっていた。ただでさえ、彼女は服を着て僕の前にいる時から魅力的で美しさと可愛らしさを併せ持っていたのに、全身を露わにしたらその各部の艶やかさと柔らかさにドキドキしてしまった。さっき僕はそれを食べ物に例えたけれど、まさに目も手も口も、五感全てがみちるを愛おしく感じていると言っていいかもしれない。

 そんなことを考えていて、ふと気づいた。いま指で触れているそこは、あまりにデリケートで、熟した果実のように柔らかい。どれほど優しい手つきを心がけていても、指では痛みや傷を伴ってしまいそうだ。それならばここも〝食べて〟しまえばいいのではないだろうか。詳しい方法はわからないけど、男女間でも〝口でする〟ことはあると聞いたことがあるし。何より、みちるのそこが食べて欲しいと言っているようにも見えて──まあ、それは僕が都合よく解釈している部分もあるのだろうけど──とにかく、今の僕たちにはそれがぴったりなのではないかと思ってしまった。

 僕は思い切ってそこに顔を近づけた。甘い匂いを放つ花のような核部を、舌でつつく。

「えっ、やっ! ちょっと、はるかっ……やぁっ……ん!」

 突然のことに驚いたようで、僕の頭はみちるの足に挟まれることになってしまうが、構わない。溢れ出た蜜を舌で絡めとるように舐め、先ほど指で確かめたひだと入口を捉える。温かく柔らかく甘くて、食べ頃の果実。唇も使いながら、なるべく優しく食む。

「はぁ、ああっ、はるか……ん、そんな、ところ……」

 みちるは身体を細かく震わせながら、僕が彼女の足に絡ませていた腕に縋るよう、手で握った。その手の力の入り方でみちるが感じていることが伝わってくる。

 僕はまた夢中になってそこに吸い付いた。みちるが高く啼く声に気持ちがますます昂った。その声を聞いていたら僕は、食べても食べても、満足するどころかますます飢えていくような気がした。