004. 読書記録「沈黙のパレード

2022.10.1

 ここ最近の読書の中でも大本命と言えるでしょう、東野圭吾さんのガリレオシリーズ「沈黙のパレード」。九月から映画公開されているので、先行して原作を読みました。

 しっかり覚悟を決めて読みましたが、なかなかに重く読み応えのある本でした。

 このガリレオシリーズ、もともと高校生の頃に東野圭吾さんの小説が好きでいくつか読んでいる中ドラマ化されて(ドラマ化は高校卒業後ですが)、ますますはまったものでした。母が福山雅治が好きというのもあって、放送を楽しみにしてましたね(笑)

 中でも「容疑者Xの献身」は忘れられない作品です。原作を裏切らない展開や堤真一さんの演技がすごく良くて。

 人は愛する他人のためにどこまで手を汚せるか?

 赤の他人にどこまで希望を見出し生きることができるか?

 そんなことを考えさせられる話でした。


 そして今回のシリーズでも「容疑者X」に随所で触れることになります。


 あらすじですが、東京のとある町で行方不明になった当時十九歳の女性の遺体が、 三年後にまったく縁のない町のゴミ屋敷の焼け跡から見つかります。関連を追っていると、ゴミ屋敷の住人の関係者は二十三年前に別の事件で逮捕されたが無罪となった男。過去の事件では多くの状況証拠が見つかっていたにも関わらず、容疑者が一切事件について語らず黙秘を貫いたため、有罪と決定づけられなかった。警察にとっても遺族にとっても因縁の残る相手で、今度こそは決定的な証拠を見つけて有罪としたいが、またもや男は沈黙を貫き、起訴に失敗します。

 あろうことか、釈放後に行方不明女性が元いた東京の町に戻ってきて、遺族と接触しにきた男。遺族の気持ちを逆撫でするような発言をして去った数ヶ月後、町の名物イベントであるパレードの日、男が謎の死を遂げる。


 この事件では「容疑者X」と同様、「他人のためにどこまで手を汚せるか」そして「どこまでそれを沈黙できるか」が鍵になります。そして関連する人物が多く、単純にひとりの人間を守るためだけにひとりが決断をした、と言えるような話ではありません。複数の事件と複数の遺族や関係者が絡み、そして偶然も重なり、多くの謎によって隠されていた真実が最後の最後に明かされます。

 よくまあ、これほど入り組んだストーリーを思いつき、書き切ることができたものだと、本当に毎度毎度驚かされます。プロの小説家の方への感想として正しいかはわからないですが、東野圭吾さん、本当に凄い方です。


 ただ今回、「容疑者X」ほど強い衝撃や感動はなかったかなと思います。それほどに関係者が多く複雑で、手が込んでいたせいもあるかもしれません。「容疑者X」は、一人の隣人に生きる希望を見出し、その人を救うために手を汚す、究極の愛を描いていたのですが、今回はたった一人の強い愛情よりも、あらゆる人の思惑が絡んで複雑化している印象です。ストーリーへの意外性や驚きは感じるのですが、一人一人の感情や印象は薄くなったように感じました。

 

 もしかしたらここまでの流れを読んで、あるいは同じように作品を読んだことがある場合は気づかれる方もいるかもしれませんが……「容疑者X」は、ある意味はるみちに共通するとも言えるんです。他人に生きる希望を見出し、その人に無償の愛を注ぎ、自らの犠牲を厭わず守ろうとする姿……まさにみちるさんじゃないですか。

 「容疑者X」自体、はるみちが好きでなくても多くの人の心を打つ作品だと思います。ただ、「沈黙のパレード」と比較したときにどこが良かったかとか、どちらがより好みなのかと考えた時に、ポイントとなったのがここなのだと理解すると、私個人としてはすごく腑に落ちたのでした。


 「容疑者X」を読んだのはもう十年以上前ですが、こういう作品が心に残っているからこそ、「彼女だけがいない世界」みたいな作品を書いてしまうような気がしますね……。はるみちはアニメでは最終的に幸せになっていると捉えられるし、それが多くの人の希望だと思いますが、パラレルとして二人に困難が訪れて一方(特にみちる)がもう一方を庇って、秘密を抱えたまま自己犠牲を払おうとする、みたいな話をきっと好んでしまうんですね(笑)やっぱり厨二(いや、今回の場合は高二か?)の魂百までだなぁ。


 ということで今回も前回に引き続き、以前から好きだった作家さんだったということもあり、自分の根底にあるものを見つける機会になりました。

 映画を見たかったがために駆け足で好きな作家さんの作品を読みましたが、今後はあまり読まない作家さんの話もゆっくりと読みたいなぁと思ってます。