006. 流行りのAI絵描きに思うこと

2022.10.20

 AI絵描きが話題になって数ヶ月経ちますね。いろんなご意見を目にしますが、ごくごく個人的な意見というか、思うことを書きたいと思います。メリットデメリットやAI普及により危惧されるトラブルは一切無視して、主観だけで語る話です(笑)


 結論から言ってしまえば、私はAI絵描きの存在を全否定したいと思ってます。私個人的には一切必要ないと思っているからです。


 AI絵描きが話題になった時、プロアマ問わず「こんなAIだったら欲しいな」という夢が語られるのを随所で見ました。自分の苦手な工程やキャラを描く作業を省略するとか歪み補正とか、「苦手な部分をサポートするAI」が大半でしょうか。私も苦手な工程はあるし、人と比べて特別絵が上手いとは言えないと思うので、あったらもっと早く上手に絵が描けるだろうと思います。


 が、それでも、いかなるAIも自分の作品には介入させたくありません。

 なぜなら私は、絵を描くことそのものを楽しむために描いているからです。絵を完成させて発表する以前の、絵を描いている時間そのものが好きだ、と言えばわかりやすいかもしれません。勿体つけた割にごく普通の理由ですね。つまらなくてすみません(笑)


 私は「描く作業」そのものに魅了されて絵を描いています。自分が神絵師のような目を引くような実力もなくセンスも凡人レベルで一向に伸びないのに、それでも続けるのは、描く作業が好きだからです。

 もちろん、絵を見て励ましをくださる方や一緒に楽しむ同志(TwitterのFFさん)の存在はかなり大きく、モチベーションに大いに関係していますが、それでも自分が絵を描く理由として、完成品を見てもらうことよりも、描く時間そのものを求めているという事実は大きいです。描いている時間は夢中でいられて、脳に何か癒しの分泌成分が出ている気がします。科学的根拠は一切ありませんが、それだけ没頭し、ハマれる趣味だということです。

 (実は文章を書くときも同じ現象が起きていて、作業中に使う脳みその部位は違うけれど書いている時に分泌される成分は同じではないかと勝手に思ってます。が、いま成分うんぬんとか「書く」ことにまで踏み込むとややこしくなるので触れないでおきますね。笑)

 

 この「夢中になれる時間」には、苦手な工程でウンウンと唸りながら試行錯誤する時間も含まれます。唸りながら試行錯誤して納得いく形になったり、以前の自分よりも上手にできたりすると、達成感で癒し成分がバンバン分泌される……気がします。

 つまり、たとえ苦手な工程であろうと歪んでいようと下手であろうと、絵を描く工程の一部がAIに奪われてしまっては、私が絵を描く中での達成感や癒し効果が減ってしまうのです。


 同じ理由で、絵のトレスもあまり好きではありません。(公式や他人のイラストをトレスする、いわゆる「トレパク」がルールとしてダメなのは当然なのですが、ここでは正義感でそういう行為を糾弾したり、逆にトレスフリー素材を問題ない範囲で利用されている方を否定する意図はなく、自分が好きか嫌いかだけで話しています)

 難しい構図やポーズはトレスフリーの素材を使えば綺麗に描けていいのかもしれませんが、むしろそういう苦手なポーズこそ、自力で挑戦し、描ききった時の達成感が大きくなります。トレスすれば簡単だしトライしたこともありますが、その時間はあまり楽しいと思えませんでした。(そう言う意味でトレパクは、ルール的、倫理的にうんぬん以前に「そんなことして何が楽しいのだろうか?」と純粋に疑問に思うのですが、まあ今は関係ないので置いておきます)

 絵を描く行為のどこを優先しているかは人それぞれだと思うので、トレスそのものを全否定するつもりはないです。正しい使い方をして良い作品ができるのはいいと思います。


 若干AIから逸れてしまったので話を戻しますが、AIが話題になった時に「人間の描く楽しみは奪われない」とか「魂を込められるのは人間だけ」とか、かっこよく表現された絵師の方もいらっしゃったと思いますが、つまりはそういうことです。お仕事として苦手な作業を減らす必要がある方や正確性を求められる方が「作業の補助として」AIを役立てるのは良いのではないかと思いますが、描く楽しみを奪われたくない私の趣味の範囲にAIは不要だろうと思っています。


 ……なんて。偉そうに言ってみましたが。いざ便利なAIが一般の手軽な存在として普及した時に、全く使わずにいられる保証などどこにもありません。だって今でさえ、便利なアプリ、ブラシ、素材にたくさん頼りながら絵を描いていますから。

 元々はアナログでの絵に憧れ、今でもバランス良く自分の力でアナログ絵を描ける方をとても尊敬しており、いつかは目指したいと心から思っていますが、そうは言っても早くて便利で綺麗に描けるデジタルの力を知ってしまった私は、そこから抜け出せていません。前述したようにトレスは面白く感じなかったのでトレスフリー素材こそ使っていませんが、それ以外のフリーの背景素材やブラシなどはたくさん使っています。だから私は「全部自分の力で描いています」なんて言えないのです。そうなると、AIの介入の有無も、大した差はないように思えますよね。


 もしかしたらデジタルツールの普及時にも、こう言った葛藤があったかもしれません。「自分の力で描く楽しみを奪われてしまうのか」と危惧した方もいるかもしれません。

 そうしてアナログならではの良さ(ペンの感触、インクの伸び、失敗しても戻せない緊張感など……)に残り、今もそれを愛する人もいますし、デジタルを取り入れて新たな道を模索した人もいるのでしょう。


 ツールを活かすも殺すも使う人次第。どういうスタンスで使うかも人それぞれ。


 じゃあ結局この話の結論はどこへ向かうの? って話ですが、少なくとも今話題になっている、「自分の絵を学習するAI」はやはり不要かなと思っています。自分の絵を量産する必要性は全くないので。苦手な工程をかっ飛ばすようなAIができたとしても、単純に工程省略が目的なのであれば私個人的には不要かなぁと思います。

 でも例えば「AIが絵の歪みを教えてくれるけど直すのは自分自身」という絵画教室みたいな使い方ができるようになったら、自分で描く楽しみを残しつつより綺麗な絵を目指せるかもしれないから、使いたくなるかもしれません。


 AIに限った話ではないですが、システムや新しい技術は人を便利にします。ですが、人に取って代わるものではありません。人から楽しみを奪うものでもありません。

 この文章を書いている最中に「お絵かき実況している絵師から作成途中の絵をスクショとして奪い、AIに続きを描かせて元の絵師より早く絵を完成させる(そしてパクられた元の絵師がパクった側に「お前がパクった」と言われる)惨事」を何件か目にしましたが、言うまでもなくこうやって誰かが描く技術や楽しみを奪ったり、パクったパクられた、みたいな不毛な争いをするために使われるべきではないはずです。

 私はシステムや技術を使って人を便利にすることが本職で、AIには直接的に関わらないもののちょっと近い場所にいる以上、やはり悪用は気分のいいものではありません。(まあ、そうは言っても便利なものって大体真っ先に悪用されるんですけどね)


 きっと当面の間はこの論争が続き、どこかで着地点を見つけられた人が徐々に使い出し、追随して多くの人が使い始めて普及していくのでしょう。(並行して悪用問題とも戦い続けなければならない)今はまだ各AIが独立していますが、そのうちお絵かきアプリへのAI搭載が当たり前になって、描きながらAIを噛ませるなんてこともそう遠くない未来で当たり前になる気がします。

 AIとの付き合い方や使うかどうかの選択は、その時自ずとさせられるのかもしれません。