020. 読書記録「護られなかった者たちへ」
2025.1.30
『護られなかった者たちへ』(中山七里)の感想です。
あらすじ。清廉潔白の善人と周りから評判の三雲という男が殺される。その方法は、自由を奪われた状態でじわじわと餓死させられるという凄惨なものだった。強盗でもなく恨みを買うような人物でもなかったため、容疑者が浮かばず事件解決は難航する。
そんな中、同じ殺害方法で城之内という男が殺された。県議会議員としては珍しく、不祥事とは無縁の堅物として知られ、県民の声をよく聞く善人であることから犯人像が浮かばなかった。
しかし、ふたりは過去に同じ保健福祉事業所の生活保護担当として働いていることが判明した。ふたりの在籍中にトラブルとなった事案を洗うと、とある高齢女性の生活保護申請が却下されたことで知人男性の利根が殴り込みと放火に入り逮捕されていることがわかった。事件当時は利根が仮出所していたことも判明し、さらに過去のトラブル時にもう一人関係者がいたことから、次のターゲットはその人物になると踏み、警察は彼が現れる場所で利根を容疑者として待ち受ける。
だが、警察が利根を確保したにも関わらず、三人目の被害者は拉致された。利根は自分が犯人ではないが被害者の居場所に心当たりはあるといい、警察はその証言通り犯人と被害者を見つけ出した。
先日読んだ「悪い夏」に続き生活保護制度が題材の話でした。なので被害者が生活保護制度に関わっているという時点で「いくら周囲から見て清廉潔白とはいえ、市民の反感を買うことはあるだろう」と思って読んでいたのですが、やはりそうでした。どちらの話にも共通しますが、生活保護制度は完璧でなく、本当に必要な人が手にできていない実情があります。容疑者となった利根も、家族同然に過ごしていた高齢女性が生活保護を却下され餓死してしまったことから、生活保護申請窓口の三雲と城之内を殴りに行き、勢いで放火してしまい実刑を受けることになってしまいました。
どう考えても利根以外に犯人はいないだろう、ということで読み進めていくと、実は他にもこの女性と利根と家族のように過ごしていた弟分がおり、利根はその人物が「復讐」のために二人を殺し、三人目の被害者も探していることに気づいたため、弟分を止めるために自分が捕まる覚悟で三人目の被害者に近づいたのでした。
読んでいる途中でそれらの伏線というか匂わせる表現がわかってしまうネタバレのようなポイントがいくつかあるのですが、かと言ってがっかりしてしまう内容でもなく、最後は利根の真面目さや優しさに心を動かされました。
「悪い夏」はめちゃくちゃな終わり方であまりスッキリしなかったのですが、こちらの話は最後に、この事件が世間に影響を与え問題提起するかたちで終わるため、利根や犯人の思いが多少報われるような気がして(現実世界でも本の中の世界でも、生活保護制度の粗が改善されていないことには変わりないのですが)少しほっとする終わり方でした。